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細胞治療I:技術の進展と産業の現況

執筆者の写真: BE HealthBE Health

従来の薬物治療は、主に化学合成された低分子薬を用い、その作用機序や代謝速度を予測しながら一定の治療効果を目指してきました。 

しかし、2000年頃から抗体薬や標的薬といった新しいタイプの薬が登場し、免疫系を調節するとともに薬物の触媒作用を組み合わせることで、より安全かつ効果的な治療が可能になると注目されるようになりました。 

その結果、細胞治療への関心が一層高まり、現在では多くの成功事例が報告されています。      


BE Health 医療事務マネージャー  陳長溢 

 


   

細胞治療とは、簡単に言えば、患者自身の細胞(自家細胞、autologous)や提供者からの細胞(同種異系細胞、allogeneic)を加工・改変し、患者の体内に再導入することで特定の治療効果を得る方法です。その応用範囲は非常に広く、がん、自己免疫疾患、神経変性疾患、遺伝性疾患など多岐にわたります。 

細胞治療は、独立した治療分野として確立されていますが、その起源は実に1960年代頃にまでさかのぼります。 

  • 1959年、E. Donnall Thomas博士は、世界で初めて白血病患者に対する骨髄幹細胞移植を成功させました。この画期的な成果は、幹細胞が持つ治療の可能性を示し、その後の数十年にわたり、骨髄移植はさまざまな血液関連疾患を治療する重要な手段となりました。 

  • 1980年代、科学者たちが臍帯血中に造血幹細胞が存在することを発見し、1988年には初めて臍帯血移植手術が実施されました。 

  • 1981年、Sir Martin Evans博士がマウスの胚性幹細胞を初めて分離することに成功し、細胞治療の基礎を築きました。この功績により、2007年にノーベル生理学・医学賞が授与されています。 

  • 1990年、Steven A. Rosenberg博士がアメリカで初めて遺伝子治療の臨床試験を実施し、この分野の幕開けを告げる重要な一歩となりました。  

  • 2000年代、胚性幹細胞の研究は科学的および倫理的な議論の中心となりました。特に2006年、日本の幹細胞研究者である山中伸弥氏が、4つの転写因子を用いることでマウスの皮膚線維芽細胞を誘導多能性幹細胞(iPS細胞)に変換できることを発見しました。この画期的な技術により、体細胞から幹細胞を誘導生成することが可能となり、再生医療や細胞治療の発展が飛躍的に促進されました。 

  • 技術の成熟と臨床試験の急速な進展に伴い、細胞治療は2010年頃から多くの臨床応用が実現されるようになりました。その中でも特に注目されるのが、キメラ抗原受容体T細胞(Chimeric Antigen Receptor T Cells)を用いたCAR-T療法です。この療法は、遺伝子、細胞、そして免疫の特性を組み合わせたもので、個別化治療を可能にする革新的なアプローチとされています。 

  • 2017年には、アメリカ食品医薬品局(FDA)がCAR-T療法を、小児および青年のB細胞性急性リンパ性白血病や悪性リンパ腫の治療として初めて承認しました。これをきっかけに、さらに多くの細胞治療製品の承認と臨床応用が期待されています。また、この分野は多くの疾患に対して極めて高い治療可能性を秘めており、今後のさらなる発展が見込まれています。 

 

細胞治療は、その応用シーンに応じて大きく「がん免疫療法」と「組織再生医療」の2つに分類されます。さらに、治療の原理や目的に基づき、これらからさまざまな療法が派生しています。 

 

台湾では、衛生福利部が早くも2018年に「再生医療法」の準備作業を開始し、2024年6月には立法院で三読を経て法案が成立しました。 

 

次回の記事では、細胞治療の具体的な療法や台湾における現行の実施状況について、さらに詳しくご紹介します。 

 

 

詳しい情報をご希望の場合は、 Bryant.chen@behealthventures.com までお問い合わせください  

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